凍霜害を防ぐ:物理的な対策
- 2021年9月28日
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秋や春に“強い霜に注意”と天気予報が言うとき、多くの場合、当該地は移動性高気圧で覆われる。この結果、風が弱く放射冷却が強まって、地表に霜が降りる。したがって霜を防ぐには、1)放射冷却を防ぐ、2)風を送ることが有効な手段となる。
1)放射冷却を防ぐ
放射冷却は熱放射によって地上から天空に熱が奪われる現象だ。熱が奪われないよう作物を覆えば、放射冷却を緩和できる(こちらを参照)。ハウスやトンネルでは被覆材によって放射冷却が緩和される。露地栽培では寒冷紗やネットなどで作物を覆う凍霜害対策の方法がある(詳しくは後日)。広大な畑や園地では、古タイヤなどを燃やして煙で覆う対策もしばしば実施された。見た目には黒い煙だが、放射冷却を弱める効果はそれほど大きくなく、一晩中、発煙しても1℃前後の昇温効果である。労力がかかることや、居住地が近い場所では煙害を招くことなどにより、今では大規模に実施するところは少ないようだ。このほか人工霧で覆う技術などが開発されたが、設備のコストや管理上の難点から普及していない。
ここで先人の知恵を一つ紹介しよう。図1のように畝の北側にヨシズを立てて菜っ葉やカブを栽培する風景が、昭和40年ごろまで主に関東の冬の畑でよく見られた。昼は北風を防ぎ陽だまり効果で作物体温や地温が上昇する。夜は天空への放射冷却を防ぎ凍霜害を抑制する。ヨシズで天空の半分を覆えば、放射冷却も半減する。覆下(おおいした)栽培と呼ばれ、ネット上の百科事典でも紹介されている。なお被覆材で遮光して玉露茶などを作る技術も覆下栽培と呼ばれるが、これも初めは霜よけが目的だった(詳しくはこちら)。
2)風を送る
近年、茶園や果樹園で導入が進んでいるのが、防霜ファンだ(図2)。霜が降りるような夜は、地表付近の気温が上空に比べて著しく低い(こちらを参照)。一般には上空の温かい空気を地表に送ることが、防霜ファンの効果だと説明されるが、放射冷却下にある作物体温は周囲の気温よりも低いので、風を送るだけで作物は温まる。「夜風は温風」の効果も大きい(こちらを参照)。すなわち防霜ファンは上空の温かい空気を地表に送って地表付近の気温を高め、さらに作物周辺の空気を動かして対流で作物を温めるという2段構えの効果を発する。

3)その他の方法
零下に下がった作物に水を掛けると水が凍って潜熱(凝固熱)を発生する。この熱で放射冷却を肩代わりする技術を散水氷結法という。水を掛け続けると、作物が氷で覆われて、作物体温は0℃前後で推移する。凍霜害の防止効果は大きいが、作物に均一に散水する装置が必要である。また氷の重さで作物が折れることがあるから、果樹や茶など利用できる作物が限られる。一度散水を始めると、温度が上がるまで散水を止めることができない。途中で止めると作物体温が低下するだけでなく、散水ノズルや配管が凍ってトラブルや故障の原因となる。
そのほかに果樹園で焚き火によって気温や作物体温を高める方法もある。小さな火点を多数配置すると効果が高まるが、燃料代や労力の面で実施例は少ない。

