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ヒートポンプ暖房の特徴

  • 2023年12月6日
  • 読了時間: 3分

更新日:2024年6月12日

 農林水産省が進める「みどりの食糧システム戦略」では、ハウス暖房からの二酸化炭素排出量を削減するために、2030年に「ヒートポンプ等の導入により、省エネルギーなハイブリッド型園芸施設を50%にまで拡大」、2050年に「化石燃料を使用しない園芸施設への完全移行」を目標とする。ヒートポンプはこの中核を担う暖房装置と位置付けられる。

 ヒートポンプは家庭用のエアコンやエコキュートにも使われる仕組みで、冷房と暖房の両方に使うことができる。気体(冷媒)を圧縮すると温度が上がり、膨張させると温度が下がる。暖房運転時には、圧縮した高温冷媒を室内機に導いて熱を供給する。熱を放出した冷媒を室外機で膨張させて外気温以下に温度を下げ、この時に外気と熱交換して熱をもらう。すなわち室内を暖房する一方で、屋外を冷房している。このように冷たい外気(熱源)から熱を汲み上げるのでヒートポンプと呼ばれる。冷房運転時には室内と室外の冷媒の動きをこれとは逆にする。圧縮機に使うエネルギーよりも大きいエネルギーを暖房用に得ることができ、圧縮機に入力したエネルギーに対する暖房エネルギーの比をCOP(成績係数:Coefficient of Performance)と呼び、COPが大きいほど効率が良い。例えば、COPが3のヒートポンプでは、1kWの運転エネルギーで、3kWの熱を室内に供給できる。

 空気を熱源とするヒートポンプのCOPは外気温や設定室温によって変わるが、およそ3〜6程度の値だ。外気温が高いとCOPが増加するが、外気温が低いと低下する。また室温が高いとCOPが低下する。すなわち内外気温差が大きいとCOPは下がる。例えば、ある機種の性能をカタログ等から推算すると、外気温が2℃の時(室温は不明)のCOPは2.8、7℃の時は3.6、外気温6℃で室温が20℃だとCOPは3.5、室温10℃で4.8であった。とくに外気温が氷点下に下がると、室外機が霜取り運転をするので、さらにCOPが低下する。外気温や室温ごとにCOP値や暖房能力を細かく示したメーカーカタログは少ない。一つだけ値を示す例も多いので、その値がどのような条件で得られたものか確認することが重要だ。

 北日本や高標高地など外気温が氷点下を大きく下回る地域では、空気熱源のヒートポンプの効率(COP)が著しく低下する。こうした地帯では地中熱を熱源とするヒートポンプが推奨される。地温は気温に比べて変動が少ないので、地下水や地下1〜2mに敷設した熱交換用パイプから熱を汲み上げることで、COPの変動が少なく安定した暖房能力を維持できる(詳しくはこちら)。

 ヒートポンプは二酸化炭素の排出が少ない暖房機として期待されるが、石油価格が高騰する現今、運転経費の削減も大きな魅力だ。仮にCOPを3、電力料金(農業用)を22円/kWh(基本料金を除く)として、1リットル100円の重油(暖房機の効率は0.85)と熱量単価を比べると、ヒートポンプの単価は重油暖房機の約半分だ。一方で石油燃焼式の暖房機に比べて設備コストが高いのが短所だ。暖房容量が同等の石油温風暖房機と設備経費を比べると、空気熱源ヒートポンプで3〜6倍、地中熱源だと10倍以上と見積もられる。このためヒートポンプですべての暖房熱量を賄うのではなく、石油暖房器と組み合わせたハイブリッド暖房が一般に使用される。例えば、最大暖房必要熱量の30%の容量のヒートポンプを優先的に運転して、暖房負荷が小さい間はできるだけヒートポンプで対応する。最大暖房必要熱量の残り70%の容量の石油暖房機を備えて、ヒートポンプだけでは熱量が足りない時に石油暖房機を運転する。このように小さな容量のヒートポンプで全暖房期間の熱量の60〜80%を担うことができる(詳しくはこちら)。

 ところでヒートポンプで冷房も可能と記したが、日中の高温対策にヒートポンプを使うのは非現実的だ。昼間は太陽からハウス内に床面積1平方メートル当り500W以上の日射熱が降り注ぐ。この熱を除去するには、とんでもない容量のヒートポンプが必要だ。夜間の冷房除湿で作物の生育促進と病害軽減などに活用する。



 
 
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