台湾の日本梨産地
- 2023年8月17日
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台湾はバナナやパイナップルなどの熱帯果樹の産地と思われがちだが、梨とくに日本品種(新興、豊水など)の人気が高く、その生産量は台湾における果樹生産の上位に位置する。温かい地域ほど植物はよく育つから当然だと思わないでほしい。梨もりんごも台湾では簡単に作れない作物だ。春に花を咲かせる植物の多くには自発休眠という仕組みがあり、休眠から覚めるには冬の寒さが必要だ(参照:「冬が暖かいと桜の開花が遅れる」)。このため台湾の日本梨生産は標高2000mほどの高地に限られ、標高の低い平地では亜熱帯系の横山ナシが作られていた。1970年代後半に低標高地でも日本梨を生産できる技術が開発された。休眠から覚めた日本梨の穂木を高標高地で採取し、平地の横山ナシに接木する方法だ。
この技術が普及すると、高標高地で採取する穂木だけでは栽培に必要な量を確保できなくなり、日本の梨産地に穂木を求めることになった。こうして鳥取、新潟、福島などから穂木の輸出が始まった。当初、日本の梨生産者は台湾から日本に向けた梨の輸出増大を懸念したが、台湾における日本梨の需要が高く、ほとんどは台湾国内で消費された。接木のための穂木は11月中旬から12月に台湾に出荷される。日本では通常1〜2月に行う剪定の作業を早める必要があるが、剪定で切り落とす枝を出荷できるため、副収入源として積極的に取り組む地域もある。また穂木の生産・出荷を目的とする栽培も一部で行われている。
冬の寒さによる休眠打破が必要な温帯性の花木を、接木という手段で温かい地域でも商業的に生産できることを、この技術が示した。日本国内ではハウスを利用した果樹の早出しが普及しているが、暖地と連携してこの技術を使えば、ハウスを使わずに早出しができるだろう。さらに温暖化が進んで現在の産地で果樹生産が難しくなった時にも、この技術が応用できそうだ。