冬が暖かいと桜の開花が遅れる
- 2023年8月4日
- 読了時間: 2分
更新日:2023年8月14日
暖冬の年は、鹿児島の桜(ソメイヨシノ)の開花が、福岡や東京などに比べて10日以上遅くなる。平年値でも鹿児島は福岡に比べて数日遅い。なぜだろうか。そこには自発休眠という植物の機能が関係する。植物は寒い冬を越すための戦略を備えている。一つは耐凍性を高めるための低温馴化で(参照:「寒さに備える植物」)、もう一つが自発休眠だ。例えば、樹木は夏から秋にかけて花芽や葉芽を作るが、越冬前の暖かさで動き出さないようこれらの芽は休眠に入る。この休眠を自発休眠という。低に温(例えば5℃くらい)に一定期間遭遇すると自発休眠から覚める。休眠から覚めることを休眠打破という。通常は初冬に休眠打破するが、すでに気温が低いので芽は動かない。この状態を他発休眠または強制休眠と呼ぶ。こうした仕組みがあるから、春に気温が上がるまで花芽や葉芽は動き出さない。時折、秋に寒い日があると冬前に一部の芽が休眠から覚めることがある。桜や梅などの狂い咲きはその例だ。休眠から覚めるために必要な低温の程度と期間を低温要求量という。低温要求量は植物の種や品種によって異なる。
冬の温度が高いと低温要求量を満たすまでに時間がかかり、休眠打破が遅れることがある。休眠から覚めても花芽が動き出して開花するまでには一定の時間が必要だから、結局開花も遅れる。鹿児島の桜が遅れるのは、主にこれが理由だ。さらに低温の程度が不十分だと、花芽ごとに休眠打破の時期がずれてしまい、開花が揃わない、満開にならないなどの現象が起こる。沖縄ではソメイヨシノに必要な低温要求量を満たすことができないから、ソメイヨシノはうまく開花できない。沖縄には低温要求量が小さい早咲きの桜品種が植えられる。りんご、なし、桃、さくらんぼなどの果樹にも自発休眠があり、冬の寒さが休眠打破に必要である。温暖化が進むと、果樹生産地で休眠打破できない地域が拡大する恐れがある。