電磁波で伝わる熱放射
- 2020年9月10日
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更新日:2022年4月29日
ここで熱放射を説明しておこう。この熱放射は地球温暖化でもキーとなる現象だから、きちんと理解する必要があるが、その多くは目に見えないので理解が難しい。すべての物体は電磁波で熱を発している。この電磁波は、熱放射、赤外放射、温度放射あるいは赤外線、遠赤外線などと呼ばれ、この呼び名も混乱を招く原因となっている。ここではひとまず熱放射と呼ぶ。この熱放射はその物体の表面温度が高いほど、より大きな熱エネルギーを放出する。また温度が高いほど、電磁波の波長が短くなる。私たちの身体や植物など地上の物体から出る電磁波の波長は非常に長くて、人の目には見えない。特殊なセンサーでこれを見えるようにしたのが、サーマルカメラ(サーモグラフィー)だ。海外で伝染病が発生したときに、空港で帰国する人の体温を監視する機械だ。新型コロナ対策でも、建物の入り口などで活躍している。表面温度が1000℃くらいになると、人の目に赤く見えるようになる。たき火の炎や燃える炭がそれだ。表面温度が約5500℃(絶対温度では約5800K)の太陽の放射は、光として人の目にもよく見える。それでも太陽の放射エネルギーの半分を占める近赤外光は人には見えない。太陽から放出される熱放射(日射)は、波長が短いので短波放射とも呼ばれる。一方、私たちの身体や地球上の物体から放出される熱放射は、波長が長いので長波放射と呼ばれる。赤外放射や遠赤外線などもこの長波放射とほぼ同義で使われる。ここでは、以降、長波放射を用いる。
表面温度が高い物体と低い物体が向かい合うと、どちらの物体からも長波放射が出るが、高い物体からの長波放射の熱量がより大きいから、差し引き温度の高い物体から低い物体に熱が移動する。霜夜によく登場する放射冷却は、地表の温度よりも天空の温度の方が低いから、地表から天空に熱が逃げる現象だ。たき火を囲むときに、たき火に当たる身体の面だけが暖かいのも、たき火からの放射のためだ。身体の反対面は非常に冷たい面に対しているから、むしろ熱が奪われる。
真冬に部屋の暖房温度を20℃に設定すると、一戸建ての木造住宅だと少し寒く感じるだろう。ところが上下左右を囲まれた集合住宅やビルの一室だと、同じ20℃でもそれほど寒くは感じない。これは部屋の周囲の壁の温度が違うからだ。隣の部屋も暖房していれば、壁の温度が高いから、身体から放射で奪われる熱が少なくなる。同じ部屋でも、冬の20℃は寒く、春の20℃は寒くない。これも壁や天井の温度が、春の方が高いからだ。放射暖房パネルは、このような放射の性質を利用している。パネルには炎も赤い色も見えない。それでも表面温度が50〜60℃のパネルに向き合うと、そこから長波放射が届いて温かく感じる。