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蒸発の潜熱〜打ち水の効果

  • 2023年10月29日
  • 読了時間: 2分

更新日:2024年7月7日

 プールに入った後に体を拭くまで寒い思いをした人は多いと思う。体の表面についた水が蒸発して熱を奪うからだ。水が蒸発して水蒸気になるにはエネルギーが必要で、その時に周囲から熱を奪う。この熱を蒸発の潜熱あるいは気化熱という。蒸発の潜熱は温度によって変わるが、30℃の水1gが蒸発するには2425J(580cal)の熱が必要だ。1gの水の温度を10℃上げるのに必要な熱量は約42Jだから、これに比べて潜熱は非常に大きい。山などで雨に濡れると低体温症の危険性が高まるのはこのためだ。一方、人間は暑い時に汗をかく。その時の蒸発潜熱が体温の上昇を抑える。植物も蒸散で体温上昇を抑制している。蒸散が盛んな植物群落では、日が当たっていても群落の温度が周囲気温より低いことがある。

 夏の風物詩の打ち水は蒸発の潜熱を利用した暑さ対策だ。路面1平方メートル当たり1リットル(降水量に例えると1mm)の水が蒸発すると、強い日射が1時間注いだ熱量に匹敵する熱を奪う。打ち水の作用は空気の温度を下げることではなく、日射で温まった路面の温度を下げて、路面からの照り返し(放射熱)を抑えることだ。この時、冷たい水が路面を冷やすのではなく、水の蒸発潜熱で路面を冷やす。例えば20℃の水と30℃の水を比べると、両者の熱量の差は1g当たり42Jで、その分だけ20℃の水の方が冷却効果は大きいと言えるが、蒸発の潜熱(約2400J)と比べると、その効果は60分の1程度だ。わざわざ冷たい水を使っても大きな効果はない。

 晴天日中は太陽から絶え間なく日射エネルギーが届く。その間に打ち水を続ければ当然大きな効果が期待できる。筆者は断熱のないスレート屋根の牛舎で、屋根面に井戸水を流し続けると、屋根温度が15℃くらい低下し、牛の熱ストレスが緩和することを確かめた(論文はこちら)。市街地の路面でも打ち水を続ければ暑熱対策として大きな効果が期待できる。しかし日中から打ち水を続けるのは難しいから、日射が弱まる夕方に打ち水するのが有効とされる。

 
 
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