気温の上昇(地球温暖化とヒートアイランド)
- 2024年7月7日
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近年、世界各地の気象観測地点で気温の上昇が続いているが、観測された気温上昇のすべてが地球温暖化によるものではない。多くの気象観測点が都市に位置するため、観測値には地球温暖化だけでなくヒートアイランド現象や観測露場周辺の環境が影響する。ヒートアイランド(heat island=熱の島)現象は、都市の気温が周囲に比べて高くなる現象だ。アスファルトやコンクリートに覆われて水の蒸発が抑制される、建物に風が遮られて熱がこもりやすい、車や空調機器、工場などからの排熱が原因とされる。ヒートアイランド現象による気温上昇は、都市の規模が大きいほど大きく、また海洋に面した地域ではその作用が小さい。このため温暖化による気温上昇を見積もるときには、ヒートアイランド現象の影響が小さいと考えられる観測点のデータを用いる。日本の場合、沿岸を中心に国内の15地点が選ばれている(こちら参照)。
岩手県内陸の盛岡と沿岸の宮古で観測された過去100年の年平均気温の推移を図1に示した。2024年6月時点の推計人口は盛岡が約28万人、宮古が約4.6万人である。図中の点は各年の観測値、太い実線は10年移動平均、細い直線は100年のトレンドを示す回帰直線である。同じように東京と太平洋に面した千葉県銚子を比べたのが図2だ(2024年6月推計人口、東京:約1400万人、銚子:約5.5万人)。いずれの地点でも気温が上昇していることがわかるが、その程度は青で示した沿岸の地点に比べて赤で示した内陸の地点で大きい。100年の上昇率は、沿岸の宮古で1.1℃、銚子では1.7℃であった。一方、盛岡の気温上昇率は1.9℃、東京は2.9℃で、それぞれの地域の沿岸に比べて1℃前後上昇率が大きい。盛岡や東京では温暖化による気温上昇にヒートアイランド現象による上昇が上乗せされている。
図をさらに細かく観察してみよう。いずれの地点も1980年代後半以降に気温上昇の傾向が増大しているように見える。とくに2023年の気温が極端に高い。この傾向が今後も続くとしたら、地球温暖化による気温上昇はこれから先より急速に進行すると危惧される。
ところで東京の10年移動平均値を見ると、2010年以降の傾向が他の3地点とは異なり、気温上昇が停滞したように見える。これは東京の観測点が2014年末に移転したためだ(こちら参照)。移転前の観測露場(大手町)はビルや道路に囲まれていたが、移転先の北の丸公園の露場は緑地の中にある。2地点間の距離は900mだが、周囲環境の違いによって移転後の年平均気温は0.9℃低くなった(こちら参照)。移転しなければ東京の10年移動平均値は赤い点線のように経過したと推定される。移転によって東京の100年当たりの気温上昇率は見かけ上過小に見積もられた。実際はさらに大きい3.4℃前後と推定される。このように気象観測値には観測露場周囲の環境も影響するから、観測データの取扱いには注意が必要だ。ちなみに群馬県館林市にあるアメダス観測点は、かつて国内最高気温を観測し「日本一暑い町」と言われたが、近年は国内最高の座を他に譲っている。温度が上がりやすい場所にあった旧露場が2018年に開けた場所に移転したことが大きな理由だ。

