農業から排出される温室効果ガス
- 2021年6月29日
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地球温暖化の原因は、人類の活動で排出される温室効果ガスである。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書(2014年)によれば、2010年に世界で排出された温室効果ガスは約49 G-ton(ギガトン)で、およそ4分の3を二酸化炭素が占める(図1)。二酸化炭素の主な排出源は化石燃料だが、森林の減少や土地利用の変化に伴う排出もかなりの割合を占める。2番目に大きい温室効果ガスはメタンで、続いて一酸化二窒素、フロン類である。メタンは湿地やシロアリなどの自然界からの排出が約3分の1、残りの3分の2が人為起源で、化石燃料の製造・輸送過程からの漏出、牛や羊などの反芻動物、水田などが主な排出源で、農業由来が人為起源排出量の50%弱を占める。一方、一酸化二窒素は50%強が自然起源、50%弱が人為起源で、農耕地への施肥や畜産廃棄物など農業由来が人為起源排出量の80%強を占めるという報告もある。さらに森林から農地への転用が森林減少・土地利用変化による二酸化炭素排出の主因だから、農業がクリーン・グリーンの産業とは言いがたい。
2010年に日本で排出された温室効果ガスは約1.3 G-tonで世界全体の2.7%を占め、日本は世界で5番目に排出量が多い国である。図2に2019年における日本で排出された温室効果ガスの内訳を示すが、世界の傾向とやや異なり、二酸化炭素の割合が圧倒的に大きい。なお同図には森林や土地利用変化の影響を掲載していない。日本では森林・土地利用分野が吸収源であり、排出量がマイナスとなるからである。日本におけるメタンと一酸化二窒素の排出割合は世界全体の数値に比べるとかなり小さいが、農業がこの二つの温室効果ガスの主要な排出源だから、ここでは少し詳しく述べる。
「日本国温室効果ガスインベントリ報告書2021」に掲載の直近(2019年)データによると、農業の生産活動に伴う温室効果ガス排出量は日本全体の排出量の2.6%になり、その大半をメタンと一酸化炭素が占める。これに同報告書のエネルギー分野(燃料の製造・消費等)に集計される農林水産業からの排出量(ほとんどが燃料の燃焼による二酸化炭素)を加えると、農林水産業からの排出量は国全体の3.8%に達する。国内総生産(GNP)に占める農林水産業の比率が1.2%、あるいは農業就業人口の割合が1.3%(漁業を加えても1.5%)であることを考えると、日本においても農林水産業は温室効果ガスの排出比率が大きい分野と言える。
人為起源のメタンに限ると、日本では農業からの排出が77%、続いて廃棄物処理(ゴミや屎尿処理)が16%を占め、燃料からの漏出や燃焼による排出はわずかだ(図3)。農業分野で主要な排出源は稲作と消化管内発酵で、稲作では湛水した還元下の水田で有機物が分解される過程で、消化管内発酵では牛のゲップとともにメタンが排出される。水田土壌で発生したメタンの大半は気泡で出るのではなく、稲体内の通気組織を通って大気に出てくる。人為起源の一酸化二窒素については農業からの排出が47%を占め、燃料の燃焼が29%、廃棄物処理が19%と続く(図4)。農用地では土壌に施用した化学肥料や有機物の窒素が硝化・脱窒する過程で一酸化二窒素が放出される。農業分野で温室効果ガスを削減するためには、稲作や家畜の飼養管理、窒素肥料の施肥や家畜排泄物の処理に伴う排出抑制が重要である。

