根を冷やすと菜っぱが甘くなる
- 2025年2月28日
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更新日:2025年11月14日
寒締め菜っぱはなぜ甘くなるのだろうか。高糖度(フルーツ)トマトの栽培にそのヒントがある。高糖度トマトの栽培法は大きく二つある。一つは徹底的に灌水を控える方法、もう一つは土壌や養液に塩を加えて根から水を吸いにくくする方法である。どちらも吸水を制限して栄養生長を抑える。光合成で作られた糖が茎葉の生長に使われずに体内に溜まるというわけだ。ところで植物の根の吸水能力が低温で低下することは古くから知られていた。学生時代のゼミで読んだ論文を思い出し、試しにホウレンソウの根を冷やしてみたところ、予想通りに甘くなった。図1はその実験結果だ。
ホウレンソウをポット(ポリエチレン製コップ)で育て、ポットを水槽に沈めて根の温度を制御した(図2)。1週間後に糖度の変化を測定した。7月の実験ではハウス内の平均気温は約19℃だったが、地温が10℃以下に低下すると糖度が上昇した。一方、ハウス内気温が4℃だった冬の実験でも、地温10℃以下で糖度の上昇が大きかった。実験開始から1、2日ほどは、日差しが強くなると地温10℃以下の低温区で葉が萎凋し、吸水が制限されたことが分かった。その後は次第に乾燥に耐えられるようになって萎凋しなくなるが、生長は抑制された。
普通の土で育てたホウレンソウでも、糖度と地温の間に密接な関係が得られた。図3は盛岡のハウスでいろいろな時期に育てたホウレンソウの糖度と地温の関係を整理したものだ。糖度を測る前5日間の平均地温(深さ10cm)を横軸にとると、糖度が10℃を境にきれいな折れ線で示される。根を冷やした実験と同じような結果だ。これらの結果からホウレンソウは地温が10℃以下に低下しないと甘くならないことが分かった。なお菜っぱの種類によって、甘くなるための地温は異なる。例えば、コマツナはホウレンソウより低い温度で生長するから、糖度を高めるにはより低い地温が必要だ。
ところで果糖が多い果物(例えば、りんご、なし、ぶどうなど)を冷やすと甘くなるのは、果糖が低温でより甘みの強い形に変わるからだ。またジャガイモやニンジンなどの根菜類を低温貯蔵すると甘くなるのは、デンプンが糖に変わるからだ。これらは、寒締め菜っぱが甘くなる仕組みとは異なる。店で買った菜っぱを冷蔵庫に入れても甘くはならない。


